美容のために重要なアミノ酸

美容のために日頃からタンパク質やコラーゲンを摂取したり、コラーゲン入りやアミノ酸系の化粧品を利用している!という方も多いのではないでしょうか。 今回は、皮膚を中心とした美容とアミノ酸の関係についてお話ししたいと思います。
キレイな身体のために必要なアミノ酸
タンパク質(アミノ酸)によって構成される組織
イラストで示すように、タンパク質はキレイのために意識している、髪の毛、爪、歯、そして皮膚などの組織の構成成分のひとつです。そして、そのタンパク質はすべてアミノ酸によってできています。
アミノ酸の種類
身体を構成するタンパク質は、これらの20種類のアミノ酸でできているといわれており、体内で合成されない必須アミノ酸(9種)と体内でも合成される非必須アミノ酸(11種)に分けられています。構成するアミノ酸の数や種類、結合の順序を変えることによって、十数万以上のタンパク質を作り出しているのです!
例えば、髪の毛に含まれる主要なタンパク質はケラチンであり、そのケラチンは、シスチンやグルタミン酸などをはじめとした18種類のアミノ酸でできています。また、体内のタンパク質の約30%を占めるコラーゲンの構成成分には、グリシンが約1/3含まれ、その他、プロリン、アラニンなど多くのアミノ酸によってできています。
新陳代謝
食事から取ったタンパク質は、そのまま身体の一部になるわけではなく、分解されてアミノ酸やアミノ酸2個〜3個からなるペプチドとして小腸から吸収されます。吸収されたアミノ酸の一定量はアミノ酸プールに蓄えられます。その際、プールからあふれた分は、基本的に排泄され、健康な成人の場合は、タンパク質の摂取量と排せつ量がほぼ等しい状態になります。
ただし、タンパク質が不足すると身体に異常をきたす可能性があり、摂り過ぎてしまうと脂肪として蓄えられたり、排泄の際に負担がかかり、その場合においても身体に異常をきたす可能性があります。
蓄えられたアミノ酸は、さまざまなタンパク質を合成します。それと同時に組織を構成していたタンパク質は分解され、この合成と分解が常に繰り返されることで私たちの身体のタンパク質は新しくなっていきます。これが、いわゆる新陳代謝です!
年齢などによっても変わりますが、一般的に皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)は1か月〜1か月半といわれています。つまり、鏡で見た自分の顔はいつも同じに見えますが、細胞的には1か月後には別のものになっているということですね。
皮膚とアミノ酸
次に、美容の要である皮膚とアミノ酸について詳しくお話したいと思います。
皮膚の構造とはたらき
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織から成り立っていますが、その厚さは、なんと2mm程度。(部位によって異なります。)その中でも表皮は、たった0.2mm程しかありません。さらに、表皮はさらに角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分かれ、表皮の一番外側に位置する角質層は、わずかに0.02mmです。
皮膚は人体最大の組織であり、いくつかの役割があります。
その多くを担っているのが、真皮細胞であり、皮膚の形や弾力を保ち、体温調節、知覚作用、表皮の栄養を整えて、肌の環境を守っています。一方、一番重要である身体の組織を外敵から守る保護作用は、大部分を表皮、それも角質層が担っています。皮下組織は、そんな表皮と真皮を内側から支えています。
スキンケアと角質層でのアミノ酸の役割
皆さん、化粧品の効果はどこまで届いていると思いますか?
正解は……基本的には、表皮の一番外側に位置する角質層までです。
しわを気にしてコラーゲン入りの化粧品を使用している方も多いと思います。間接的な効果としては間違いではありませんが、ちょっと違います。
化粧品を販売する上のルールとして、強調して成分名を記載する際には、配合目的を記載しないといけないので、化粧品の広告や商品の入った化粧箱を見てもらったら、「コラーゲン(保湿成分)」や「コラーゲンが肌にうるおいを与え乾燥を防ぎます」などと記載してあるかと思います。つまり、化粧品に含まれるコラーゲンの直接的な役割は、しわ改善ではなく保湿です!
もしかしたら、がっかりさせてしまったかもしれませんが、そんな必要はありません。 少し前の文章を思い出していただきたいのですが、これは、角質層が外敵から身体の組織を守るバリア機能の役割をしているからです。
身体の組織を守るバリア膜として皮膚を覆う角質層の構造は、以下のように、タンパク質成分に富む角質細胞が積み重なり、その間を細胞間脂質が埋める形態からなっています。そのおかげで私たちの身体には外界からの有害物質などが侵入しないようになっているのです! また、天然保湿成分によって生体内に重要な水分を保持する機能も果たしています。
正常な角質層は、乾燥した空間でも適度な水分を保持することで柔らかく滑らかな皮膚を保ちます。この皮膚の柔軟性に富み滑らかな状態が皮膚の状態の良し悪しを左右するため、化粧品で保湿してうるおいのあるお肌を目指します。
天然保湿成分には、セリンをはじめとし、シトルリン、アラニン、スレオニンなど約40%のアミノ酸が含まれており、水分結合による角質層の柔軟性のため重要なはたらきを担っています。アトピー性皮膚炎などの場合、皮膚も乾燥しており、水分保持機能の低下と同時にアミノ酸含有量が低下することが知られていますが1)、ターンオーバーによってアミノ酸リッチな角質層へと日々生まれ変わることで、キレイな肌が保たれているのです。
一方、角層中の水溶性のアミノ酸は、皮膚を水につけると容易に溶出するので、お風呂上りにはすぐに肌のケアをすることが勧められます。 また、チロシンは皮膚のメラニン色素の源であるアミノ酸で、このメラニン色素も角質層と並んで、シミやしわの原因になるとされる太陽紫外線の害を防御する天然のサンスクリーンです。
このようにアミノ酸は皮膚にとって重要な役割をはたしています!
正しいアミノ酸摂取
先述した通り、皮膚にとってアミノ酸が重要なことは分かっていただいたかと思います。
皮膚や髪の毛のタンパク質である、コラーゲンやエラスチン、ケラチンを摂取するのもよいのですが、基本的にタンパク質はアミノ酸に分解されてから必要に応じてタンパク質を合成します。そのため、コラーゲンを食べたからといって必ずしも目的のコラーゲンが作られるかは分かりません。コラーゲンを摂ることのメリットもありますが、日ごろからアミノ酸をバランスよく摂取することが効率的にタンパク質を作るためのコツになります。
バランスよくアミノ酸を摂取するためには、アミノ酸スコアが100になるように食事を組み合わせ、タンパク質量として自身の必要量を摂ることです。
※アミノ酸スコアについて詳しく知りたい方は「アミノ酸スコアを正しく理解しよう!」をご覧ください。
まとめ
ここ数年、女性だけでなく、男性も美容への関心が高まっており、肌のお手入れなどに気を遣う方が増えているかと思います。
外からのアミノ酸による美容ケアも大切ですが、内側からのバランスの良いアミノ酸補給も忘れないようにしましょう!
参考文献
1)岸 恭一, 社団法人 日本必須アミノ酸協会(2003年)「アミノ酸セミナー」. 東京都, 新谷滋記